62年度は、筋原線維を構成する高分子蛋白質のうち、コネクチンを家兎胸最長筋よりnativeな状態で単離精製することに成功し、同時に死後貯蔵中の量的・質的変化を明らかにした。本年度(63年度)は、nativeな状態で鶏の胸筋から精製したコネクチンを腹腔に注射して免疫したマウスの脾臓のリンパ球を採取し、細胞工学的手法によりコネクチンに対するモノクロナル抗体の調製を試みた。 鶏胸筋から調製したnativeコネクチンをBALB/Cマウスの腹腔に注射し、3週間後、再度コネクチン液を調製注射した後、抗コネクチン・ポリクロナル抗体の作製に成功した。抗コネクチン抗体産生能を付与したBALB/Cマウスの脾臓と、酸素欠損を有するマウスのミエローマ細胞(NS-1株)をポリエチレングリコール4000を使って融合させ、96穴の組織培養プレートに分注し、炭酸ガス培養器中で、37℃、7%炭酸ガス濃度で培養し、2週間後、ELISA液によりコネクチンに対する抗体価を測定した。融合細胞がコネクチンに対する抗体を作ることが判明したので、抗体価の高いウエルの細胞についクローニングを行ない、コネクチンに対する抗体を産生する融合細胞(ハイブリドーマ)の確立を進めている。細胞の増殖が遅いために、大量培養まですすんでいないが、モノクロナル抗体調製の手がかりを得ることができた。もう一つの高分子蛋白質、Z-ninについては、nativeな状態での分離が難しいことが明らかになったため、SDSで変性させた標品を使い抗Z-ninポリクロナル抗体の調整には成功している。 コネクチンに対するモノクロナル抗体の調製が順調に進めば、タイケン、Z-ninに対するモノクロナル抗体を同様の方法で調製し、死後硬直の解硬、それに続く軟化機構に、筋原線維を構成する高分子蛋白質が果す役割を明らかにすることができる。
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