筋原線維Z帯の脆弱化やコネクチンの作る網目構造の脆弱化が死後硬直の解硬の一因と考えられているが、Z帯成分の1つであるZーnin及びコネクチンといった筋原線維を構成する高分子蛋白質の筋肉内での存在形態や死後貯蔵中の変化については不明な点が多い。 本研究では先ず、と殺直後の家兎胸最長筋からnativeなコネクチンの分離精製を試み、純度の高いコネクチンの単離に成功した。コネクチンの収量は、と殺直後の筋肉からの収量に比べて貯蔵筋肉中で増加する傾向が認められた。精製コネクチンの性状を電子顕微鏡で観察した結果、貯蔵筋からのコネクチンは、と殺直後の筋肉からのコネクチンに比べて細分化しやすいことが認められた。コネクチンの作る網目構造が食肉の柔軟性に何らかの関連性を持つと考えるならば、貯蔵中に網目構造が量的・質的変化を起こし、細分化しやすくなるということは、食肉の軟化熟成を考える上で無視できない。 次に、鶉胸筋から調製したコネクチンを使い、BALB/cマウス腹腔に注射し、抗コネクチン・ポリクロナル抗体を調製した。抗コネクチン抗体産生能を付与したBALB/cマウスの脾臓と、酵素欠損を有するミエローマ細胞とを融合させ、コネクチンに対する抗体を産生する融合細胞(ハイブリドーマ)の確立をすすめ、大量培養によるモノクロナル抗体調製の手がかりを得た。Zーninについては、nativeな状態での分離が難しいことが明らかになったため、SDSで変性させた標品を使い、抗Zーnin・ポリクロナル抗体の調製には成功している。 コネクチンに対するモノクロナル抗体の作成が順調にいけば、タイチン、Zーninに対するモノクロナル抗体を同様な方法で調製し、死後硬直の解硬、それに続く軟化熟成機構をより明確にすることが可能になると考える。
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