研究概要 |
1.目的:鶏卵白中のovoinhibitor(O.I)はtrypsin,chymotrypsinを同時に阻害する多重機能性inhibitorであり微生物proteinaseも阻害する. このO.Iと阻害スペクトルが類似するタン白性inhibitorは卵黄中にも存在することは筆者らは見出している. ^<1)>これらのinhibitorの生理的役割は国内, 国外でも未解明であるのでその解明へのアプローチのため本研究を行った. 2.方法:鶏卵白からの硫安半飽和塩析物を水透析して得たpseudoglobulin画分からchymotrypsin-Sepharose affinity cffinity chromatog.によりO.Iを単離した. ふ卵7日目の卵黄25個の胚部の0.05M phosphate buffer,pH8抽出液からO.IをリガンドとしたSepharose ahromatog.により胚プロティナーゼを分離した. この処理を16回繰返し, 400個の卵黄から得た酵素液につき性質を調べた. 酵素活性はKunitzのカゼイン消化法により測定した. 3.結果:多量の胚部から初めて少量分離されたproteinaseの活性は極めて弱くhr単位で測定が可能であった. 反応至適pHは8〜10の広範囲に亘り, 至適温度は42〜46°Cであり, pH9.0, 70°C,60分間処理では活性低下はみられなかった. 活性はMg, Cuイオン, EDTA添加では影響されず10^<-3>M濃度のFe^<2+>, Znイオン添加で約45%阻害された. 本酵素はDFPを用いた修飾により完全に失活した. さらにO.Iにより強く阻害されるがtrypsinのみを阻害するovomucoidでは全く阻害されなかった. このことは本酵素がtrypsin様酵素ではないことを示している. 化学組成面の特色はCys, hexosamineを含まずmet, His含量が少ないことである. 以上の事から鶏卵中のO.Iの存在は(1)侵入微生物のproteinaseに対する生化学的防御と(2)ふ化過程中の胚proteinase制御によるタン白代謝調節の面で機能していることが推定され, 生化学的にも合目的であると判断された. 1)杉元, 沖田, 古賀:農化誌, 52,457(1978), 古賀, 福永, 今井:農芸化学会西日本支部大会講演要旨 39(1985)
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