前年度に得られた結果から、吸乳刺激による黄体形成ホルモン(LH)と卵胞刺激ホルモン(FSH)の分泌抑制には、吸乳刺激に伴って放出される副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)とβ-endorphinが重要な役割を演じている可能性が推察された。本年度は、CRH、β-endorphin分泌亢進とLH、FSH分泌抑制並びにprolactinの分泌亢進との関係について検討した。 実験1.泌乳ラットのLH、FSH、prolactin分泌に及ぼす副腎の影響:8匹の乳子を哺育する泌乳ラットを泌乳10日に両側副腎を摘出し、経日的にLH、FSH、prolactin、inhrbin、progestcuneを測定した。併せて絨毛性性腺刺激ホルモン投与による排卵試験法により卵胞発育度を調べた。その結果、副腎摘出群では、LH、FSH、progestercune、inhibin分泌が著しく抑制され、prolactnは逆に亢進し、卵胞発育と黄体機能が共に抑制される事実が判明した。これらの結果から、副腎摘出により人為的に、CRHとβ-endorphin分泌亢進状態を作出すると、LHとFSH分泌が著しく抑制され、その結果として、卵巣では卵胞発育と黄体機能が抑制されるのと推察された。 実験2.吸乳刺激に伴う副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、prolactin、Corticesterone(C)分泌:泌乳ラットの泌乳5あるいは15日に乳子を除去し、3時間後に再哺育させ経時的にACTH、proloctin、Cの血中濃度を測定した。prolactin分泌は、泌乳5日に比べて15日には著しく低下したがACTH分泌は15日の方が高い値を示した。CはACTHと同様な変化を示した。以上の結果から、吸乳刺激に伴って、pcolactinのみならずACTH、Cが分泌される事実が判明した。また、ACTHの分泌は泌乳時期により異なり、しかもprolactinとは異った分泌パターンを示す事実が明らかとなった。これらの成績は、吸乳刺激に伴って放出されるCRHがβ-endorphinの分泌を促進し、その結果として、LHRH分泌を抑制することによりLHとFSH分泌を抑制し、しいては卵巣機能を抑制することを示すものであり、前年度の仮説を支持した。
|