本年度は、泌乳ラットにおける黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)分泌抑制機構に対する副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)の関与を明らかにする一端として、泌乳前半期及び後半期のラットを用いて吸乳刺激による副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)及びユルチコステロン(GC)分泌を調べた。併せて、泌乳前半期と後半期における下垂体のACTH分泌活性及び副腎のGC分泌活性を各々の刺激因子を用いて比較検討した。 1.吸乳刺激によるACTH及びGC分泌:泌乳前半期(5日)と後半期(15日)のラットを用いて、呼吸刺激によるACTHとGCの分泌を調べた。その結果、乳子による30分間の吸乳刺激により、泌乳前半期のラットでは血中ACTHの上昇は明らかではないが、後半期では速やかにACTHが分泌される事実を初めて明らかにした。一方、血中GC濃度は吸乳刺激により泌乳前半及び後半期で同様な上昇が観察されたことから、下垂体及び副腎の反応性が泌乳時期により変化するものと推察される。 2.ACTH投与によるGC分泌:泌乳前半期と後半期のラットに3用量のACTHを投与し、副腎のGC分泌反応性を調べた結果、泌乳前半期では後半期のラットに比べて副腎のGC分泌反応性が高いことが判明した。 3.CRH投与によるACTH分泌:泌乳前半期と後半期に2用量のCRHを投与し、下垂体からのACTH分泌を調べた結果、副腎の反応性とは異なり、下垂体ACTH分泌反応性は泌乳後半期の方が前半期によりも高い事実が判明した。以上の結果から、吸乳刺激に伴ってACTHが分泌されることを初めて明らかにした。しかし、その分泌反応性は泌乳時期によって異なり、泌乳前半期では、下垂体のACTH分泌反応性は低く、後半期になると反応性が亢進する事実が明らかとなった。このような変化は、下垂体のCRHに対する反応性の変化が関与するものと推察された。一方、ACTHに対する副腎のGC分泌反応性は泌乳期の進行に伴って低下する事実が判明した。
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