研究概要 |
卵胞の立体構造を維持したまま卵胞を卵巣から単離培養することは、卵胞や卵子の発育機構の解析やその内分泌機能の変化を追跡する為に有効な方法と考えられる。1985にRoy & Greenwaldはハムスターの卵巣から卵胞を酵素処理によって分離することに成功した。本研究では、この方法をラット(SD系)に準用し得られた卵胞を培養し、その形態及び機能の変化を調べる為に1ー5の実験を行った。1.卵巣から卵胞を採取する酵素処理法の検討及び得られた卵胞のサイズ別単離法。2.採取卵胞の光顕的・走査電顕的観察。3.成熟ラット由来未熟卵胞の培養中の形態とprogesterone(p)分泌の変化及びPMSGの効果。4.幼若卵巣由来未熟卵胞の培養中の形態とp分泌の変化及びPMSGの効果。5.新生児ラット卵巣の器官培養と4ーandrostene-3,17-dione(a)の生成。以下、結果の概要を述べる。1.酵素処理により卵巣より得た卵胞をサイズの異なる網目を持つステンレス製金網で各種サイズに単離可能であった。2.位相差光顕による単離卵胞の観察により卵胞の直径と卵子の直径の間には、卵巣の成熟、幼若に関わらず、同様の相関が認められた。走査電顕による観察では、卵胞表面は基底膜に覆うわれ、多数のか粒膜細胞突起を持っていた。しかし、培養開始後6時間には、基底膜、突起は消失していた。3、4日間の液状培養では、単層状に増殖するか粒膜細胞の中央に卵子は維持され、PMSG添加により細胞増殖もp分泌も促進された。寒天培養では、卵胞の立体構造は維持されたが、p分泌及びPMSGの効果は一過性であった。4.幼若卵巣より得られた各種サイズの卵胞は液状培養において200μm以上では単層状の細胞増殖と共に卵子周辺に卵胞腔様のドウムを形成し、p分泌、PMSG反応性も顕著であった。5、新生児卵巣の卵胞は12日間の器官培養中維持され、6ー9日令に於いてa生成が一過性に増加し、PMSGにより刺激された。
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