研究概要 |
1.L型の誘導:ブドー球菌12株, 豚丹毒菌54株, レンサ球菌15株より, メチシリン加食塩高張培地を用い, ブドー球菌11株(うち1株は安定L型), 豚丹毒菌3株, レンサ球菌5株のL型を誘導し, 誘導の至適條件を明らかにした. また, 菌接種動物のメチシリン治療によるL型の体内誘導を試み, 用いた3株のin vitroでのL型化可能な菌は何れも体内(腎)にL型が誘導されていることがL型培地での培養により明らかにされた. 2.親株, L型およびL型より親型への復帰株の薬剤感受性:βラクタム系薬剤に対してL型が耐性であることは当然であるが, 蛋白合成阻害性抗生物質では, アミノグルコシド系薬剤に対しては耐性となるが, テトラサイクリン系, クロラムフェニコール系薬剤に対しては逆に感受性が亢進し, 同性質の薬剤でありながら異なった感受性パターンを示した. また, L型より親型へ復帰した株では, 生物学的性状や薬剤感受性の復帰は必ずしも完全ではなかった. 以上の二点から, 抗生物質の細菌に対する作用機序の解明にはL型を利用して実験を行うことの有用性が示唆された. 3.L型の菌体構造と血清学的反応:L型と親株の間には説明し難い血清学的反応がおこることが指摘されていたので, 両者の菌体構造蛋白を比較したところ, 安定L型においては親株にみられる58Kdバンドが消失し, 逆に親株には見られない148Kd, 181Kdのバンドが出現し, L型は單なる親株の細胞壁喪失菌に止るものではないことが示唆された. 現在これらの分画につきELISA, 單クローン抗体による解析を継続中である. 4.L型の病原性試験:ラット蹠皮内にFreund Adjuvantと共に親株またはL型を注射してAdjuvant関節炎発症像を比較したところ, 安定L型は第2峯を消失させるBMF(Biological Response modifier)のあることが知られ, その詳細につき目下検討中である.
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