1.L型の誘導:前年度に続き、緑膿菌、ヒナ白痢菌、大腸菌などのグラム陰性菌のL型誘導を試みた。ペニシリン、リゾチーム、グリシン等の誘導剤を含む高張白糖加培地、高張食塩加培地を用いて、緑膿菌25株より4株、ヒナ白痢菌3株より3株、大腸菌10株より1株のL型を誘導したが、これらは何れも一過性のL型であった。これらL型株の生化学的性状を親株と比較したところ、多くの性状は変化が認められなかった。 2.ヒナ白痢菌L型の抗生物質感受性:L型化に伴う抗生物質感受性の変動を調べた結果、L型ではテトラサイクリン、クロラムフェニコール、ストレプトマイシン、カナマイシン、ペニシリンに対する感受性の亢進が認められた。また、エリスロマイシンに対しては、新たに感受性の発現が認められた。 3.ヒナ白痢菌L型の病原性:予めペニシリンあるいはグリシンを投与した発育鶏卵にヒナ白痢菌L型を接種した実験では、体内におけるL型の持続は認められず、親株に復帰し胎仔は死亡した。同様に処理した初生雛では、ペニシリン投与によりヒナの生存期間の延長または生殘が認められた。今後この現象の詳細について検討したい。 ブドウ球菌L型の病原性:ブドウ球菌安定L型は、マウス、ウサギに対する実験感染では殆んど病原性を示さず、その後においても認むべき感染防禦能を示さなかった。しかしブドウ球菌安定L型とFusobocterium necrophorumとの実験的混合感染では、マウスにおいてF.necrophorumの膿瘍形成を亢進させ、膿瘍からはF.necrophorumとブドウ球菌が分離され、安定L型が親型に復帰することを認めた。このような現象は、ブドー球菌、ブドウ球菌L型、F.necrophorumの各々で免疫されたマウスにおいても同様に認められた。
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