本研究は62年度と63年度の2年間にわたったものであり、目的は刺激頻度増加によるポジテブステアケース(PS)の発現とジギタリスの収縮力増大作用が同じ機序に起因するかどうか検討することにあった。62年度においては収縮力記録実験、^<86>Rb取り込み実験、63年度には(^3H)ウワバイン結合実験を行った。以下にそれらを要約する。 1収縮力記録実験:(1)ラット(心房筋)およびコイ(心室筋)はネガテブステアケース(NS)を示した。このNSはライアノジン処置によりPSへ変化した。しかし、ライアノジンはウワバインの濃度反応曲線には影響を与えなかった。 (2)ウサギおよびモルモットではPSが観察された。ニフィジピン、ベラバミルおよびジルチアゼムはこれをNS方向へ変化させた。しかし、これらはストロファンチジンの濃度反応曲線には影響を与えなかった。 (3)NSを示すコイ心室筋の方がPSを示すモルモット心房筋よりストロファチジンへ高い感受性を示した。 (4)NSを示す成熟ラット乳頭筋の低濃度ウワバインに対する感受性はPSを示す胎児ラット心室筋に比較して高かった。 2^<86>Rb取り込み実験:モルモット心房筋では刺激頻度に依存した取り込み増加が観察された。しかし、ラットの心房筋では静止時の取り込み量が多くそれが明確ではなかった。 3(^3H)ウワバイン結合実験:コイ心室筋の方がモルモット心房筋よりウワバインに対する親和力は高かった。以上の結果はジギタリスによる収縮力増大作用とPSは機序がある部分において異なっていることを示す。PSは流入ナトリウムよりむしろニフィジピン、ベラパミルおよびジルチアゼム、それとライアノジンに感受性を持つカルシウムに直接的に影響を受けていると思われた。
|