リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスはアレナウイルス科に属するウイルスであり、この科のウイルスは本来、齧歯類を宿主としており、世界各地域に固有のウイルスが知られて居り、その幾つかは危険度の高い人獣共通伝染病の病原体として恐れられている。しかし、アジア地域には現在まで固有のアレナウイルスの存在は知られていない。リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスはヨーロッパ地域のウイルスと考えられるが、我国の実験動物の中にも抗体を保有するもののあることが報告され、その存在が疑われている。この抗体が外来性のリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスに依るものか、或いは我国に存在するリンパ性脈絡髄膜炎ウイルス、または類似するウイルスに依るかを明らかにする為の第一段階として我国の齧歯類の抗体調査を行っている。 旧大陸のアレナウイルスは抗原的に共通性があると考えられ、こうした共通性を考慮にいれて検査方法として間接蛍光抗体法を用いることとした。ヨーロッパに於いてはアポデムス属のネズミが自然宿主となることが報告されており我国のアポデムス属(アカネズミ、ヒメネズミ)に付いて調査を行ってきた。 リンパ性脈絡髄膜炎ウイルス感染Vero E6細胞を抗原として千葉県に於いて採取されたアカネズミ150例に付いて検査したところ、1例1:64の抗体価を示すものが見出された。また、静岡県に於いて採取されたアカネズミ、ヒメネズミ計360例に付いても1例1:40の抗体価を示すものが見出された。 現在この抵抗体価の示す意義に付いての研究を続行している。
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