研究概要 |
筋小胞体の機能的発達を培養筋管細胞で調べることを企図した. これを遂行する前に, まず培養筋管細胞の生ずる張力を測定する方法を確立した. すなわち, 培養皿上にできた筋管細胞の一部をガラス小片で迎え, そこから1.2-1.8mmのところを切断し, 切断し, 切断端をポリエステル糸(<10μm)でマイクロマニプレーターを用いてしばり, この糸をフォーストランスデューサーにつなぎ, 発生張力を測定することができた. 検出限界は100μgであった. この方法を用い, 培養筋管 細胞縮系のアルカリ土金属イオンに対する感受性を調べた. 張力発生の闘値濃度はCa^<2+>で5×10^<-7>M, Sr^<2+>で10^<-6>M, Ba^<2+>で3×10^<-4>Mであり, 最大張力を発生する濃度はCa^<2+>で10^<-4>M, Srで10^<-3>Mであった. Ba^<2+>は10^<-3>Mでもわずかな張力しか発生させ得なかった. 培養筋管細胞で得たこれらの用量, 作用曲線を, 成鶏の速筋・遅筋で得られたそれらと比べると, 速筋のものに似ていた. 次に, 筋原線維ATPaseのCa^<2+>感受性はトロポニンCに依存していることが知られており, このことが張力発生の場合にもあてはまるか, また培養筋でもあてはまるのかを調べた. 速筋線維を5mMCDTAを含む低イオン強度液をつけるとトロポニンCが抜け, Ca^<2+>感受性はなくなった. ここで, Mg^<2+>を含む通常の液で, 遅筋タイプのトロポニンCを組み込ませると, Ca^<2+>, Sr^<2+>, Ba^<2+>に対する感受性は遅筋タイプに変った. 培養筋管細胞胞でも同様の成績が得られ, すでに速線維に分化していることが分った. 次に, 筋小胞体の発達を調べる実験はまだ完了していないが, これ迄のところ, 成鶏の速筋線維と比べると, Ca^<2+>保持能力が低いもの, 中等度のもの, かなり高いものの3種が見出され, 成長と共にCa^<2+>保持能力が高くなってくるものと推定された. 今後は, 生体内で形成された筋管細胞での研究が必要であり, また, 筋小胞体の発達に対する神経の影響も追突されなければならない課題である.
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