コレラ毒素(CT)、ブタ、ヒト、鶏由来毒素原性大腸菌易熱性毒素(LTp、LTh、LTc)はノイラミニダーゼ、プロナーゼ処理ヒト、動物赤血球を強く凝集し、この活性はガラクトースに特異的であることはすでに報告した。 これら毒素の赤血球膜上での結合物質を推定するために、単糖、二糖多糖、糖蛋白、糖脂質を阻止物質として競合試験を行った。その結果、いずれの毒素を用いた場合もガングリオシドGM.(GH.)が最も効率よく毒素と赤血球との結合を阻止し、単糖、二糖、多糖、糖蛋白よりも10^4-10^5程度阻止能が高いことが判った。他のガングリオシドよりも5倍以上阻止能が高った。以上の成値から、これら毒素の赤血球膜上での結合物質はGM、と進定された。次にGM、糖側鎖のどの部位に毒素が結合するかを知るために種々のガングリオシド、糖特異性の明らかなレクチンを阻止物質として競合試験を行った。GM_1>GD_<1b>>GD_<1a>>GM_2>CT1b>GM_3の順に阻止能が強いことが判ったが、毒素と赤血球との結合を効果的に阻止しうるレクチンは認められなかった。ガングリオシドの阻止能と構造式を比較することにより、CT、LT_p、LT_h、LT_cは既存のレクチンが認識しえないようなGM、糖側鎖の非還元末端の二糖Gal-GalNA_c構造あるいはこれら二糖を含む糖側鎖構造を認識し結合すると考えられる。 赤血球以外の細胞表面上でのCT、LT_p、LT_h、LT_cの結合物質に相違が見られるか否か、またこれら毒素の結合物質が細胞の腫瘍化の指標になり得るか否かを株化細胞を用いて検討した。本研究で用いたヒト白血病、リンホーマ由来の株化細胞表面上にはこれら毒素と特異的に結合する(糖)蛋白は認められなかった。当初予定していた毒素と結合しうる細胞表面上の糖脂質の同定は本研究の時間内に終了することができず、将来の検討課題となったことは残念である。
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