アンギオテンシノゲン(ANG)のmRNAの局在を成熟及び発生期の肝細胞を用いてin situ hybridization法により検索したが、特異的反応を得ることができなかった。様々な標識核酸を用いて、それぞれANGcDNAを標識したものをプローブとして反応することにより、肝細胞にシグナルを得ることができるが、非特異反応も多く、一定した結果を得るにいたらなかった。それゆえ、腎摘出ラットからANGを精製し、抗ANG血清を作製した。また、ANGの水溶性領域15アミノ酸残基を合成し、これに対する抗体も作製した。Western blotやラジオイムノアッセイ法を用いて、これらの抗体が血中ANGを認識することを確認した。これらの抗体を用いて、発生期の肝細胞における、ANGの出現過程を観察した結果、胎生17日目から19日目の肝細胞では、ANG陽性反応は非常に弱いものであった。胎生20日目になると、明瞭な陽性反応が肝細胞に認められたが、21日目の肝細胞では20日目に比べ陽性反応は弱かった。生後は、生日から3日目まで、非常に強いANG陽性反応が全ての肝細胞に認められた。しかし、5日目以降、成熟肝細胞にみられるように、中心静脈域あるいは門脈域の肝細胞で抗ANGに対する反応性に違いが認められ、日齢により違った反応を呈した。すなわち、成熟ラットの肝細胞のANGは、明瞭な日周リズムを呈し、明期の初めに強い免疫反応性が特に門脈域の肝細胞にみられ、暗期の初めには門脈域の肝細胞はほとんどANG陰性であるが、中心静脈域の肝細胞では、弱い陽性反応がみられた。おそらく、5日目以降の肝細胞では、成熟肝細胞とリズムの性質は違っても固有のリズムを持っている結果と思われた。現在、これらの所見を基に、胎生期から生後にかけて、肝及び血中のANG量の動態を検索中である。
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