研究概要 |
1.精子成熟に伴う膜内粒子(IMP)や膜ステロールの分布変動を観察するため, 精巣上体各部から得たハムスター精子をフリーズレプリカ法とフィリピン法で観察した. 精巣上体頭部後半から尾部前半に存在する精子では先体部細胞膜に六角状配列したIMPが見出され, 又頭部の後輪付近には線状に配列したIMPが見られた. フィリピン処理法では精子の部分によってステロール部布が著しく異り, 先体部細胞膜に高密度に分布し, しかも精巣上体通過に密度が上昇することが見出された. またこの部分では大多数のフィリピンーステロール複合体がE面で凸に現れることから脂質二重層の外葉側にステロールがより多く存在し, 内葉側にあるステロールよりも外部への出入りが容易な事が示唆された. 2.受精能獲得に伴うIMPやステロールの変動を観察するため, ハムスター精巣上体尾部から得た精子をin vitroで培養し, 経時時に1.と同様に観察した. 培養開始直後の精子では先体部細胞膜のIMPは一様に分布しているが, 2-3時間培養後の受精獲得した精子の同部にはIMP消失領域が出現した. 又フィリピン処理の結果, この間に同部のステロールが激減することが見出された. 3.ヒトの精巣上体精子を1.と同様に観察した所ハムスターと異り, 先体部細胞膜のステロールは両葉共に高密度である事が示唆された. 現在先体部細胞膜のステロール密度やステロールの存在部位(内葉か外葉か)が種による受精能獲得時間の差と相関関係を持つか否か検討中である. 4.マウス造精細胞より単クローン抗体を作り, それが後期精母細胞から精子細胞を認識し, また熱ショック蛋白も認識することが明らかにあった. この抗体が認識する蛋白は精子細胞の運動に関するエネルギー変換蛋白と関係がある事が示唆された.
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