研究課題/領域番号 |
62570005
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
豊田 二美枝 千葉大学, 医学部, 助教授 (60009751)
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研究分担者 |
前川 眞見子 千葉大学, 医学部, 助手 (20181571)
永野 俊雄 千葉大学, 医学部, 教授 (60009082)
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キーワード | 精子成熟 / 受精能獲得 / ゴールデンハムスター / 凍結割断法 / フィリピン |
研究概要 |
ゴールデンハムスター精子の精巣上体内成熟とinvitroで受精能獲得に伴う細胞膜の変化を通常凍結割法とフィリピン処理法で観察した。精巣上体内精子の先体周囲細胞膜(PAPM)には大小二種の膜内粒子が区別できる。大粒子は直径約11nmで疎に存在し、小粒子は直径約8〜9nmで圧倒的多数を占める。精巣上体尾部の成熟精子PAPMには膜内粒子の規則配列は認められないが、精巣上上体通過中には二種類の規則配列が一過性に出現する。一つはPAPMのパッチ状領域に見られる六角状配列で、遠位頭部から体部を通過中に出現する。他は先体後部後輪付近の線状配列で、"コード"に相当すると考えられ、頭部中頃から近位尾部を通過中に出現する。成熟精子ではフィリピン-ステロール複合体(FSC)はPAPMで500μm^2と精子膜中最高の密度を示す。この密度は近位頭部から得た精子では成熟精子の約70%であり精巣上体通過中に増加する。成熟精子をTyroce液で培養して受精能獲得を誘起し、経時的変化を観察すると、二時間培養後にはPAPMのFSCは約20〜30%に減少し、同時に先体の中間部や赤道部を被う細胞膜には膜内粒子欠損部が出現し始める。またこの時期には先体後部の後輪付近に"コード"が出現する。先体反応した精子が出現し始める三時間培養後にはPAPMの小粒子の多くが消失するが、大粒子の数には変化が見られない。残留した膜内粒子は互に集合する傾向がみられ、PAPM全域に膜内粒子欠損部が形成される。ステロールは膜の安定に関与しているといわれ、PAPMは先体外膜と膜融合を起す場であるので、成熟過程で起こるステロールの増加は精子の安全輸送に寄与すると考えられる。受精能獲得の過程ではステロールの激減に伴って膜内粒子が消失し、膜融合の条件が成立すると考えられる。他に金コロイド標識抗体法を用いて精子被覆抗原の成熟変化を追跡中であり、マウス卵透明帯を大量に得るためにパコール分離法を検討中である。
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