研究概要 |
クララ細胞は肺の終末細気管支において, きわめて多数存在し, 肺の機能上, 非常に重要な役割を果たしていると考えられる. 細胞内には, 薬物代謝を担う滑面小胞体が多量に含まれているほか, 細胞の表層近くには, 気道に分泌される電子密度の高い顆粒が含まれている. 著者が, ラットで発見したクララ細胞における多量の線維は, これらの細胞内小器官と共存しており, その機能発現に重要な役割を持つことが考えられた. この線維の普遍性を調べるために, 各種ほ乳類の肺を検索したところ, マウス, ハムスター, モルモットにおいても, その存在が確かめられた. また, これらの線維成分を同定するために, 肺を界面活性剤を含む溶液で潅流した後, 凍結切片を作成し, HEAVY MEROMYOSINでラベルした. この方法により, クララ細胞に存在する大部分の線維はHEAVY MEROMYOSINと結合し, アクチンであることが判った. 一部, ラベルされない線維を同定するためにサイトケラチン, ビメンチン, デスミン等の中間径フィラメント成分に対する抗体を使ってBIOTIN化抗体+PEROSIDASE BIOTIN-ANIDIN COMPLEXによる免疫組織化学的な染色を試みたところ, 抗サイトケラチン抗体によって反応が陽性となり, その存在が示された. ビメンチン, デスミンは存在しなかった. サイトケラチンは多種のポリペプチドよりなるが, それぞれのサイトケラチンについてモノクローナル抗体をつかって検索している. 線維と細胞内小器官の相互作用を検討する目的で, 液化プロパン急速凍結器を購入し, 凍結置換法, FREEZE-ETCHING法の標本を得て観察している. また線維の形成の過程を知るために, 胎生期から新生児期のラット肺を観察したり, プロモベンゼン処理後クララ細胞が再生していく際の線維の形成をとらえる予定である.
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