研究概要 |
1.さかんにエンドサイトーシスをおこなういくつかの吸収上皮細胞(腎臓近位尿細管上皮, 卵黄嚢上皮, 精巣輸出管上皮, 回腸吸収上皮)の細胞頂部に複雑に入り組んだ膜性の細管構造(頂部細管系)を観察した. 2.この頂部細管の内腔は, 通常の電顕用固定液による観察では均一無構造にしか見えないが, 新しく考案した固定液をつかって観察した結果, 細管内にラセンを巻いて走る線維構造を発見した. 3.さらに高分解能連続超薄切片法および急速凍結置換固定法による解析の結果, この構造は左巻きの四重ラセンであり, おのおののラセンは顆粒状のサブ・ユニットの線状配列から構成されていることを明らかにした. 4.この構造を細胞化学的手法(過ヨー素酸・チオカルバジド・プロテイン銀染色法およびリンタングステン酸染色法)で解析した結果, その化学的構成成分として, タンパク質と多糖類を含むことを明らかにした. 5.また, いろいろな電顕的トレーサー(西洋ワサビペルオキシダーゼ, フェリチン)をもちいた実験により, 頂部細管系は吸収上皮細胞の物質取り込み(エンドサイトーシス)のさいに細胞膜の落ち込みによってできるのではなく, 細胞表面直下に存在する吸収空胞(エンドゾーム)より発芽して形成されることをつきとめた. 6.器官培養した回腸吸収上皮細胞に, エンドサイトーシスを阻害するコルヒチン, サイトカラシンBを投与し, 各種物質(ルシファー・イエロー, ペルオキシダーゼ等)の取り込みと頂部細管系の形態的変化を解析した結果, 物質吸収の減少にともなって, 頂部細管系も減少することを明らかにした. しかしながら, 細管内の構造分化には著明な形態的変化は見られなかった.
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