研究概要 |
ラット下垂体を前眼房に移植するとプロラクチン細胞は形態学的に活性化された電顕像を呈した. この時ホスト動物の頸動脈よりドーパミンを注入すると直接移植下垂体に達するのが確認できたので直ちに移植下垂体を取り出し電顕でプロラクチン細胞の超微細構造を観察した. その結果, 分泌果粒は小型化し分泌果粒間に免疫細胞化学的反応の差が認められた(Acta Anat.,131:66〜72,1988). 次にスンクス(ジャコウネズミ)の前葉をProtein A-Gold法で観察した結果, 妊娠動物のプロラクチン細胞の粗面小胞体内に著しく多数の分泌果粒と考えられるものが出現した. この果粒は小胞体で作られた後Golgi装置へ移行せずby pass経路で分泌果粒が形成されたと推察した(Anat.Rec.に出版中). さらに妊娠ラットおよび妊娠中か泌乳中のスンクスの下垂体前葉細胞の中で, 同一細胞内にGHのみを含む果粒とプロラクチンのみを含む果粒の2種類の果粒が存在することが頻繁に観察された. この原因の一つは細胞間の融合に起因すると推察した(Anat.Rec.に投稿中). 次にコウモリの下垂体のプロラクチン細胞は極めて検出困難と報告されていたが, 筆者らはイエコウモリの四季を通しての材料採取の結果プロラクチン細胞は妊娠末期から泌乳期に著しく増加するのを認めた. これ以外のシーズンではこの種の細胞は極めて少なく検出が困難であった. この原因については次年度に検索する予定である. その他スンクス下垂体前葉のGH細胞中に今までに報告されていない棒状の分泌果粒を見い出した(Cell Tissue Res.251:111〜116,1988). さらに糖尿病ラットのGH分泌果粒は極めて小型であるが, インスリンの投与によって果粒が正常のものに近ずくのを認めた(Histology and Histopathologyに印刷中).
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