昭和63年度は先ず組織の固定法と免疫細胞化学的反応との関連について検索した結果、無固定の凍結切片と筆者らが使用している方法とでプロラクチンおよび成長ホルモンの局在の観察を行う上で大差がなかったので本実験は従来の固定法で行った。当該年度では特に次の2点について重用な結果を得ている。 1.妊娠および泌乳中のジャコウネズミ(Suncus)と妊娠ラット下垂体前葉中のプロラクチンと成長ホルモンは同一細胞の別々の分泌果粒上に認められるが(これをSomatomammotrophと称した)、同一果粒上に共存することはなかった(Anat.Rec.223:185ー193、1988に発表)。従ってラットとジャコウネズミではプロラクチンの分泌が極めて亢進した場合にはSomatomammotrophが出現することを観察した。 2.イエコウモリ下垂体前葉のプロラクチン分泌細胞は極めて特異的で正常および冬眠中はプロラクチン果粒のみを含有する細胞は存在せず全てSomatomammotrophでありその分泌果粒は極めて小型であるが、妊娠期と泌乳期では極めて大型となりプロラクチンのみを含有する果粒の割合が増加し、全果粒数の約半数を占めるようになるのを始めて観察した。(この結果はEndocrinology124:1056〜1063、1989に発表)。 以上のように従来から報告されていたプロラクチン分泌細胞は単一の形状を示す果粒のみを含有するのではなく、さらに必ずしもプロラクチンのみを含有する細胞が存在するのではないことを確した。 次年度はIn vitroにおける上記の変化や凍結超薄切片上におけるプロラクチンおよび成長ホルモン含有果粒の形状について更に検索し、最終的な結論を得たい。
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