研究概要 |
本年度に計画した凍結超薄切片を用いた電顕免疫細胞化学的検索の結果、プロラクチン(PRL)分泌細胞については常法による結果と大差がなかったのでむしろ細胞内小器官が明確に観察される従来の電顕固定法によって本年度の実験を行った。 先ずラットの肝臓を60〜70%部分除去した場合GH細胞およびPRL細胞の形態学的変化を観察するとGH細胞、PRL細胞両方とも分泌活動の亢進した像が観察された。肝臓の部分除去によるPRL細胞の機能亢進については今回の筆者らの観察は今迄に報告されたものがない。肝臓の部分除去によってPRL細胞のrERは拡張し、その間にむしろ円型に近い成熟分泌果粒が散在することが多く、果粒放出像は頻繁にみられた。一方Golgi zoneには未熟果粒の形成が盛んでプロラクチン合成の亢進が示唆された。従ってこの場合のPRL細胞の果粒合成から放出のturn-overは短くなっていると考えられた(Virchows Archiv〔B〕57:361-366,1989)。さらに70%肝臓部分除去によって血中エストロ-ゲン値及びPRL量は明らかに上昇し、術後3日目がピ-クであった。この結果から、筆者らは肝臓部分除去によって血中エストロ-ゲンの分解が肝臓で不充分となり、血中のエストロ-ゲン量が増加することによりPRL細胞の機能を亢進するのではないかと考えた(Virchows Archiv〔B〕に投稿中)。さらにラットに生後1カ月目に四塩化炭素を投与し人為的に肝硬変ラットを作り、下垂体プロラクチン含有細胞を観察したが上記の肝部分除去の結果と酷似した(解剖学会誌64巻2号-要旨)。次にスンクス下垂体を腎皮膜に移植しPIEの影響を遠ざけPRL細胞の機能を亢進させた場合、すでに報告した小胞体内果粒(Intracisternal granules)がやや増加した。しかし妊娠末期や泌乳期のPRL細胞でみられるこの種の果粒の頻度よりはるかに低かった(未発表結果)。
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