研究概要 |
ホ乳類の足形態に基づく筋線維構成の機能形態学的研究の目的で、5目20種145個体の前脛骨筋における筋線維型のdataから、その平均値をもって比較検討した。単位面積1mm^2中に占める筋線維数が最も多かったのは、半蹠行型の食肉目イタチ科のテンであった。次いで趾行型の食肉目、蹄行型の偶蹄目の順で、最小値は蹠行型の齧歯目やヒトを含む霊長目であった。筋線維型の頻度ではphasic contractionを示す白筋線維が多く、5目20種のうち16種のホ乳類において白筋型の傾向が示された。これに対し、赤筋線維では、霊長目のヒト、スロ-ロリス、偶蹄目のキリンとイノシシで頻度が高かった。最も頻度が低かったのはplastic contractionを示す中間筋線維であった。次いで筋線維細胞の大きさでは、小径が赤筋線維、中径が中間筋線維、大径が白筋線維の順となったが、スロ-ロリスのみは、赤筋線維が大径、白筋線維が小径となり、他のホ乳類と逆転した所見が示めされた。また、筋線維径の平均値と標準偏差値より、筋線維の変動係数をみると赤筋線維では蹠行型の動物が最も大であった。次いで趾行型と半蹠行型では有意差がなく、中間筋線維では趾行型,半蹠行型、蹠行型、蹄行型の順となった。更に1mm^2中に占める筋線維数と筋線維径の相関性では、筋線維数が多い動物では、筋線維径が小さく、逆に筋線維径が大きいものでは筋線維数が少ないことから、三タイプとも負の相関図が示めされた。 以上の結果より、ホ乳類の骨格筋を構築している三タイプの筋線維細胞は、各動物の足形態とlocomotionの内容をよく反映しており、特に行動や運動能と相関性が強いことが、筋線維型の定量的な分析より明らかにすることが出来た。また、筋線維細胞の大きさは、同一種内では体の大きさに比例して大きい傾向が示めされるが、系統発生学的に比較した場合には、筋線維細胞と体の大きさの間には、まったく相関性がないことが認められた。
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