研究概要 |
本研究の目的は, リンパ濾胞が, TまたはBリンパ球を刺激し, かつマクロファージ(以下Mφ)を活性化する物質によって誘発されるとする我々の作業仮説の妥当性を検討することにあった. 1.ヌードマウスにおける濾胞形成. ヌードマウスに, 抗原やミトゲンを局所的に投与し, 所属リンパ節に濾胞形成を誘発するか否かを検討した. その結果, (1) 胸腺依存性抗原やT細胞ミトゲン濾胞を誘発しない, (2) 高分子量の胸腺非存性抗原(TI抗原)やB細胞ミトゲンは誘発する, (3) 可溶性のTI抗原やB細胞ミトゲンは濾胞を誘発しないが, アルミナに吸着させて投与すると誘発することがある. このことから, ヌードマウスにおける濾胞形成には, Bリンパ球とMφとか関与するものと考えられた. 2.非抗原物質による濾胞形成, Mφに容易に取込まれる非抗原物質-latex, carbon, アルミナ, 含糖酸化鉄-が濾胞を誘発するか否かを検討した. これらの物質は200μg以下では誘発しなかった. latexとcarbonは, 1mg量の投与の場合には, Bリンパ球を刺激し, 濾胞を誘発した. この場合, Bリンパ球刺激とMφの活性性によって, 濾胞形成が誘発されたものと考えられた. 3.Mφ傷害性物質による濾胞形成の影響. Mφ傷害性物質として, シリカ(500μg〜1mg), カラゲナン(500μg), デキストランDS-50(500μg)を投与した. シリカとカラゲナンは, リンパ節のMφや濾胞に認むべき変化を生じなかった. DS-50は, リンパ節Mφを広範囲に傷害し, 更に既存の濾胞に対しても傷害性変化を与えることが, 一般染色, 鍍銀染色, FITC抗IgM抗体を用いたBリンパ球染色, 電顕観察等の方法によって確認された. またDS-50で処理されたリンパ節は, 抗原刺激を与えられても, 胚中心形成, 濾胞形成がほぼ完全に抑制されており, リンパ濾胞の形成, 維持にMφの存在が必須であることが示唆された.
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