本研究により下記の知見を得た。 1.本研究に使用する遺伝性小眼球症ラットは、兄妹交配により継代飼育してきた。このラットは現在(1989年1月)18代目を迎えた。20代を越えると、純系の小眼球症ラットとして国際的な登録が可能である。 2.視覚性諸核のうち、上丘(SC)と外側膝状体背側核(LGNd)、腹側核(LGNv)および視床後外側核(LP)をみると、小眼球症ラットのLGNd、LGNvおよびSCの大きさは正常例に比して著しく小さかったが、LPのそれは軽度であった。次にLGNd、LGNvおよびLPにWGA-HRPを注入し、上丘でそれらの核に投射する起始細胞をみると、正常例と同じくtecto-LGNdニューロンはSCの浅灰白層(SGS)の上部に、tecto-LGNvのそれはSGSの下部および視束層(SO)上部に、tecto-LPのそれはSOの下部にそれぞれ層を形成して局在した。しかし、陽性細胞数は、tecto-LGNdで正常の3%、tecto-LGNvで30%、tecto-LPで50%であった。 3.小眼球症ラットの外側膝状体背側核及び腹側核の神経細胞の大きさは、正常例のそれに比べて小さく、また、樹状突起の広がりも狭く、分枝も少なかった。このようなことから、小眼球症ラットのこれらの核において、神経終末にもかなりの変化があることが想定された。しかし急性実験で見られるような神経終末の変性像は全くなく、さらにそれらの萎縮および数の減少も電子顕微鏡下で明確でなかった。
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