研究概要 |
中枢神経系の発生過程では, ある特定の部域からの軸索が的確に定まった標的とシナプスを形成していく. 本研究ではこの様な神経回路形成の機序について, ニワトリ・ウズラ・キメラ脳を作製して解析している. これまでに, 7〜10体節期の前脳胞の一部を中脳胞に移植した場合に, 移植片は視蓋様の構造をとることを明らかにしているが, この様に前脳胞から分化した視蓋において, 視神経線維がシナプスを作っているかどうかを, 電顕的に検索した. 移植後, 反対側の眼球内に注入された西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)を指標にしてキメラ視蓋を観察したところ, 移植片領域のSGFS層で, HRPを含んだ神経終末が樹状突起とシナプスを作っている像が見つかった. 但し, ニワトリ細胞とウズラ細胞は, 核を通る適当な断面では電顕でも識別可能であるが細胞の突起部では両者を識別できないので神経終末を受けている樹状突起がホスト領域の細胞から伸びだして来たものである可能性は否定できない. そこで, ^3H-プロリンで視神経をラベルしてオートラジオグラフィーを行ったところ, 移植片領域とホスト領域とで, 銀粒子の分布のパターンと量に差が無い事が判った. この結果を併せ考えると, 前脳胞から視蓋へと分化した移植片はまちがいなく視神経の投射を受けているといえる. 網膜-視蓋投射系における2次元的対応関係がキメラ視蓋でも保たれているかどうかが問題となる. HRPで標識された視神経線維を視蓋の表面で観察すると, 移植片領域を含めて視蓋全体でほとんど乱れが無くきれいに走行配列しており, 2次元的対応関係は保たれているであろうと推測可能であるが, 次年度はこの点をさらに詳しく追求する. 網膜上の視神経線維の一部を, カルボシアニン系蛍光色素Dilを用いて選択的にラベルし, キメラ視蓋への投射パターンを解析する計画である.
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