研究分担者 |
菅澤 正 東京大学, 医学部, 助手 (00179110)
南 定雄 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 文部技官
細川 浩 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助手 (80181501)
伊藤 挙 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助手 (30134737)
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研究概要 |
初年度に引続きモルモットの蝸牛に交流通電した場合に誘発される音響放射の発生過程を解析した。蝸牛内のリンパ液中であれ,シャーレの内の食塩水中であれ,電解質溶液に交流通電した場合,恐らく電極を包む分極層の非線形性に依ると見られるが,通電電流中に高調波歪,及び混変調歪の発生が認められた。耳音響放射音には,此等の内,次数の低い極く少数の歪が選択的に交流基本波と共に放射され,蝸牛内に歪放射に関わる第2の非線形性の存在が明らかとなった。この非線形性は,オリーブ蝸牛末の活動により抑制されて歪の発生が減少した。その他多くの実験事実から,蝸牛に通電した交流は,蝸牛内の機械振動に電気機械変換されて,基庭膜を駆動し,その非線形振動により歪を発生して,此等の振動が外耳道から放射される事,及び此の過程がいずれも代謝により保持されている事が明らかになった。 又臨床的に正常聴力者及び感音難聴者171名に対して,SOAEのスクリーニングを行うと共に,SOAE陽性者に対して負荷試験を行いSOAEの成因について検討した。 SOAEは聴力正常耳の30%にのみ出現し,聴力良好なほど出現率が高かった。20dBHL以上の感音難聴耳においてはSOAEは出現してなかった。一方聴力正常にも拘わらずSISI TEST陽性,BEKESY AUDIOGRAMにてSOAE周波数に一致する鋭い聴力障害など,SOAE陽性者の一部は局所の微細な内耳機能失調を示唆する検査所見を示した。SOAEは無難聴性耳鳴患者に好発する傾向を示したが,耳鳴との相関はなく,種々の内耳疾患との関連もなかった。すなわち,SOAEは臨床的にはほぼ正常の能力を持つ内耳の局所の機能失調の表われであると思われ,各種内耳疾患の早期診断の可能性が期待される。
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