研究概要 |
脊椎動物視細胞は光刺激によって過分極応答を示す. これは光刺激によって細胞内cGMPが減少し, 細胞膜上のcGMP依存性Naチャネルが閉じるためであることが確実になってきた. 最近の興味の中心はこのcGMP依存性Naチャネルに移りつつあり, その分子の同定, 分離, 精製が世界中で急ピッチで進行している. 本研究計画では, (1)cGMPの光親和性ラベルを指標にその蛋白を同定し, (2)遠心分離とクロマトグラフィーによりこれを精製し, (3)精製蛋白を平面膜上に再構成して電気生理学的にチャネル蛋白を確定することが目標である. さらに, (4)精製蛋白の抗体(IgG)を調製し, (5)これを用いた免疫電顕法により, その蛋白の視細胞内分布を調べる. また多量の精製蛋白が得られるようになれば, その一次構造を決定することが最終目標である. 62年度では上記の(1)(2)(4)を達成することが主な目標であり, これらはほぼ完了した. すなわち, 蛙視細胞をまず膜内在性蛋白, 表在性蛋白, 可溶性蛋白に分け, cGMPの光親和性ラベルを行い, 膜内在性分画の250KDa, 100KDa, 92KDa, のバンドに標識を認めた. このうち100KDaと92KDaはcGMP分解酵素であることが判明し, 250KDaがcGMP依存性Naチャネルであることが示唆された. また内在性蛋白を平面膜に再構成することにより, 3種類のNaチャネルを同定することができ, このうちの一つがcGMP依存性, もう一つがcGMPおよび, Ca^<++>依存性であることが分かった. 光親和性標識時にCa^<++>を増量させると新たに66KDaに標識が認められることから66KDaが2番目のチャネルに対応する可能性もある. 本年度はまず250KDa蛋白の精製に主力を注ぎ, ほぼその精製に成功するとともに, それに対する抗体(IgG)の精製も完了した. 63年度は250KDaの平面膜への再構成と抗体を用いた免疫電顕を行うと共に, 新たに興味の対象となった66KDa蛋白の精製と再構成に着手し, 250KDaとの比較を行うつもりである.
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