脊椎動物の視細胞は光刺激に対して過分極性の受容器電位を発生する。これは外節膜上に分布するcGMP依存性カチオンチャネルが閉じるためである。ロドプシンの光吸収に始まり細胞内cGMP減少に至る分子径路が明らかになっている現在、このカチオンチャネル蛋白を同定単離しその分子的性質を明らかにすることは焦眉の課題である。本研究計画はこのcGMP依存性チャネル蛋白の同定と単離を目指して出発した。62年度はチャネル蛋白の同定とチャネル活性の再現に重点を置いた。カエル桿体外節から内在性膜蛋白を調整し、光親和性ラベルにより66Kと250Kの二つの未知のcGMP結合性蛋白を同定した。また内在性膜蛋白を脂質平面膜に再構成することにより2種類のcGMP依存性チャネル活性を再現できたので、上記二つの蛋白が目指すチャネル蛋白であることが強く示唆された。63年度はこれらの蛋白を精製するとともにそれらの抗体を作製することに主眼を置いた。主として250K蛋白を中心に部分精製を行い、リポソーム再構成によるチャネル活性の再現に成功した。また250Kと66Kのバンドから抽出した蛋白を抗原として各々のポリクロナル抗体を得ることができた。250K抗体を用いて免疫電顕法により外節膜上の分布を検討した結果、むしろ円板膜上に強い標識が認められた。これはcGMP依存性チャネルが円板膜上に多量に分布するという最近の知見と一致する。更に興味深いことに250K抗体と66K抗体が交叉することが判明し、250Kが66Kの前駆体かもしくは両者がそれぞれ違うタイプのcGMP依存性チャネルとして振舞う可能性が示唆された。最近ウシ桿体では63K蛋白がチャネル蛋白であるとの報告が出されたが、これはカエルの66Kに相当するものと思われる。今後250Kと66Kの完全精製と再構成を続行し、これらの疑問に答えていきたいと考えている。
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