研究概要 |
本研究の目的は心筋のCaチャネルの利用可能性をパッチクランプ法で実測し, その静止電位レベル(維持電位)への依存性と, 生理的活性物質や薬物による修飾を解明して, これら物質のチャネルへの作用メカニズムを確立することであった. モルモット心室筋に細胞接着型のパッチクランプを行い以下の成果をえた. 1.ジヒドロピリジンCa拮抗薬であるニトレンジピンが電位依存性にCa電流を抑制する材序を解明した. (文献1) (1).ニトレンジピンはCaチャネルの速いゲート過程に影響しない. (2).ニトレンジピンは維持電位が十分に過分極しているときは, 100nMの濃度で30%利用可能性を低下させるに過ぎない. (3).維持電位の脱分極と共に, 利用可能性は対照でも薬物存在下でもボルツマンの式で示される減少を示し, 薬物存在下ではこの曲線は過分極方向へ優位する. (4).利用可能性の減少は利用不可能な時間の延長による. 薬物存在下ではより小さな維持電位の脱分極で生ずる. 利用不可能な時間の分布は二個の指数関数の和で近似され, 正常の状態でも, 薬物存在下でも, 二種類の利用不可能な状態があることが判明した. (5).利用可能状態(S)と不可能状態(F_1,F_2)の間の移行速度をF_1-S-F_2のモデルで計算し, 速いゲート過程の千倍程度遅い値をえた. 2.β-アドレナリン作用物質による利用可能性増加の電位依存性を調べた. (1).イソプロテレノールは十分過分極した維持電位では利用可能性を0.4より0.8に増加した. (2).利用可能性の上昇は維持電位の脱分極で相対的に増大し, これをモデルで近似しえた.
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