ラットの脳下垂体後葉において、初期の目的であった、分泌に際して生じる光散乱変化のビデオカメラによる高分解能観察に成功した。顕微鏡の対物レンズとしては100倍のものを用い、神経終末の一個一個が区別できる状態で50Hz10秒間の刺激をすると、終末内に反応が現れた。反応は非常に小さな点が単位になっており、いわゆる開口分泌による分泌顆粒の消失がその部位の光透過性の増大をもたらすものであることがほぼ確信できる。さらに、この反応は、刺激の回数に応じて一回ごとの大きさが増大するような促通効果を持つこと、また、刺激頻度が高いほど一回当りの反応が大きいという刺激頻度依存性をもつことが明らかになり、ペプタイド分泌の特徴と一致することが確認できた。この速い反応に続いて、刺激5分後にピークに達する光透過性の増大を昨年度発見したが、この信号はウアバインによって抑制されることが分かった。初めに生ずる信号はウアバインによって逆に増大し、細胞内カルシウムの関与が明かであるが、遅い反応はNa-Kポンプに直接関係したものであることが示唆される。 一方、副腎髄質から得た培養クロマフィン細胞において、ノマルスキー顕微鏡下に画像処理を介してビデオ観察したところ、個々の分泌顆粒の開口分泌の様子が明瞭に見えた。開口は、約30ミリ秒で完了し、その後、数秒から、数分に渡ってその形を維持し、次第に消失する。この開口がいわゆるΩ形を取るものであることも明瞭に観察できた。空となった顆粒が消失する過程は細胞内への膜の取り込みであるが、単独の顆粒の取り込みと、沢山の顆粒の融合の結果できる大きな液胞からの取り込みとがある。開口反応と液胞形成は明視野顕微鏡下には光透過性の増大として現れることが分かった。以上のように、本研究によて分泌に伴う光散乱変化の発生源が解決され、これからの応用の基礎が築かれた。
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