本研究の目的は神経及びそれに類似の細胞において、分泌活動に伴って生じる光散乱変化を高速画像処理装置とビデオ装置を組み合わせて2次元的に観察し、差分画像強調法によってその発生源を同定して、刺激ー分泌連関のメカニズムを解明しようとするものである。 イセエビのサイナス腺においてはテトラエチルアンモニウム処理によって、散乱変化を非常に大きなものとすることができ、対物レンズ60倍を用いた高分解能観察に成功した。散乱変化は、個々の神経終末内部で起こり、Caイオンを含まない溶液中や、Cdイオンを低濃度に含む溶液中で可逆的に仰えられる。観察された動画像から、反応は、平滑筋や血管等の収縮、その他の運動によって起こるものではないことが証明された。 ラット脳下垂体後葉においては、高頻度の繰り返し刺激を与えることによって散乱変化を大きなものにすることができ、対物レンズ100倍を用いた高分解能観察ができた。やはり、反応は個々の神経終末内で起こることが確認でき、さらに、0.3ミクロン程の小さな点からなることがわかった。このことから、分泌顆粒の消失が光反応として現れることが強く示唆された。この反応の大きさは、刺激回数が同じでも刺激頻度に応じて大きくなり、ラジオイムノアッセイによって定量したバソプレシンの放出量と直線的な相関を持っていた。 ウシ副腎髄質より単離したクロマフィン細胞においては、単細胞標本が得られたので、個々の分泌顆粒の開口分泌像が直接観察できた。その明るさの変化から開口分泌が散乱変化の原因であることが直接的に証明できた。 以上のように、リアルタイム画像処理法によって散乱変化が分泌顆粒の開口とその結果である分泌物の溶解消失によるものであることが解明された。
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