研究概要 |
延髄腹外側野に存在する動脈圧感受性ニューロンが、脊髄の交感神経節前線維をどのように支配してるかを調べるために以下の実験を行った。 ウレタン麻酔ラットで、大動脈神経(動脈圧受容器線維から成る)刺激に応ずるニューロンを延髄腹外側野から記録した。これらのニューロンはすべて大動脈神経刺激によって、その自発活動が抑制(潜時:31±4.2ミリ秒,n=5)された。脊髄の背外側索に留置した刺激電極で刺激して得られた逆行性スパイクの潜時から、伝導速度は3.4±2.1m/sと計算された。このうち3個のニューロンは、細胞体と反対側の、2個は同側の脊髄背外側索に軸索を送っていた。 試験したすべての上記のニューロンは、血圧の上昇によって自発活動が抑制された。またすべてのニューロンで心拍に同期した活動変動が認められた。これらのニューロンは、延髄の疑核の腹側、顔面神経核の尾側、即ち吻側延髄腹外側野に位置していた。 ネンブタール麻酔下で、上記のニューロン同様の心拍に同期した自発活動を有するニューロンを、順行性のトレーサーであるPhaseolus Vulgaris leucoagglutinin(PHA-L)を満たした電極で吻側延髄腹外側野で捜し、記録された部位にPHA-Lを電気泳動的に注入した。一週間後、脊髄内で、PHA-Lを有する神経軸索、神経終末を検索した。その結果、軸索は脊髄背外側索を下行し、神経終末は以下3つの領域のみに見い出された。中間外側核、中間介在核及びCentral autonomic areaと呼ばれる部位で、これらの部位に交感神経節前線維の細胞体が存在していることが明らかにされている。 以上の結果は吻側延髄腹外側野の動脈圧感受性ニューロンは、交感神経節前線維を単シナプス性に、興奮性に支配することが強く指唆する事実であると考えられた。
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