研究概要 |
近年、血圧の神経性調節における延髄腹外側野の動脈圧受容器から入力を受け、脊髄に投射するニューロン(RVLMニューロン)の役割が注目されている。 本研究課題は、このRVLMニューロンの活動を変化させる動脈圧受容器以外の入力を明らかにすること、及び脊髄のどの部位に投射するのかを明らかにすることである。62年度には主に生理学的手法で前者を、63年度には形態学的手法で後者の研究を行った。 1) 麻酔ウサギを用い、血圧変動を引き起こすことで知られている体性及び内蔵性求心性入力を加えた場合の、RVLMニューロンの活動変動を調べた。その結果、RVLMニューロンには、抹消交感神経に生ずる反射性反応に先行して、ほぼ同一の継時的パターンを有する反応が生じた。 2) 麻酔ウサギ、ラットで、RVLMニューロンの脊髄投射を電気生理学的に調べたところ、両種とも、約半数のニューロンが、細胞体と同側の、残りの半数が反対側の脊髄背外側索を送っていることが明らかになった。伝導速度には両種の間に差はなく、ウサギで平均4.2m/s,ラットで3.4m/sであった。 3) ラットでRVLMニューロンの活動が記録された部位に、順行性のトレーサーであるPhaseolus vulugalis leucoagglutinin (PHA-L) を投与したところ、PHA-L陽性の軸索は脊髄背外側索を下行し、交感神経節前線維の細胞体の存在することで知られている中間外側核等にのみ神経経末が認められた。 以上の実験結果は、RVLMニューロンは、種々の抹消からの求心性情報を統合し、交感神経節前線維を単シナプス性に、興奮性に支配していることを強く示唆するものである。
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