研究概要 |
1.モノクロナール抗体271A6は, 免疫組織化学的検索によりウサギの終脳灰白質にのみ選択的に存在する終脳特異的抗原分子を特異的に認識することが判明している. この抗体271A6によって認識される抗原分子の性質を調べるためにウサギの終脳部のホモジネートをSDS電気泳動にかけたのちイムノブロット法で検索したところ, この抗体によって分子量が12万Daと12万5千Daの2つのバンドが認識された. 2.終脳部ホモジネートの細胞下分画をドットイムノバインディングアッセイ法で調べたところ, この抗原分子は膜分画に多量に含まれることがわかった. また, 抗体271A6を用いて染色した終脳部切片を電子顕微鏡を用いて観察したところ, ニューロンの細胞体や樹状突起の表面膜に抗体が結合することがわかった. 上記1の結果とあわせて, この抗原分子は膜タンパクであろうと推測された. 3.終脳のホモジネートよりCHAPSを用いて271A6抗原分子を可溶化し, 次いでDEAE-5PWカラムやTSK-5000+3000SWカラムを用いて高速液体クロマトグラフィーで分離し, ドットイムノバインディング法でアッセイすることにより抗原分子の精製をおこなった. 現在271A6抗体を用いた抗体カラム法による精製をおこなっている. 4.抗体271A6を用いた免疫組織化学的方法により, 終脳各領域における終脳特異的抗原分子の生後発達の時間経過を解析した. 生後1日目のウサギでは系統発生的に古い領域で少量ながら発現していたが, 大脳新皮質ではまだ発現がみられなかった. 生後1日目から20日目にかけて発現量が増加した. 5.今後この抗原分子の構造の解析と平行して, その機能的役割を調べる研究の一層の推進を計画している.
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