1.終脳特異的分子の精製。ウサギの終脳のホモジネートより膜蛋白質をCHAPSにて可溶化し、モノクローナル抗体271A6を用いた抗体カラムにより、均一な蛋白質にまで精製した。この終脳特異的分子(終脳蛋白質)はSDS電気泳動下で、分子量が約130KDaの単一バンドを示す膜蛋白質で、かなりの量の糖鎖を含んでいることがわかった。ゲル濾HPLCによる分子量は約500KDaと推定されることより、この蛋白質は4量体構造をしていると考えられる。この精製した蛋白質は、モノクローナル抗体271A6の終脳切片への結合を抑制することより、終脳蛋白質そのものであることが確かめられた。 2.精製した終脳蛋白質に対する抗体の作成。上記1)の方法で精製した、終脳蛋白質を抗原としてマウスやラットを免疫し、終脳蛋白質に対するポリクローナル抗体を得た。このポリクローナル抗体を用いてウサギの脳を免疫組織化学的に調べたところ、終脳部のみに限局して結合することが判明した。このことは、終脳蛋白質が終脳部のみに選択的に発現している蛋白であり、終脳はこの分子の発現に関して特異的であることを示している。さらに、このポリクローナル抗体は、マウス、ラット、ネコ、サル等の終脳部とも結合し、終脳蛋白質は種をこえて哺乳類一般に広く存在する分子であることが判明した。 3.ネコ、サルの大脳皮質視覚野での終脳蛋白質の発現。終脳蛋白質がどのような機能を担っているのかを推測するために、機能と構造との関連が比較的よく判明している大脳皮質視覚野での終脳蛋白質の分布を上記2)で作成したポリクローナル抗体を用いた免疫組織化学的方法で調べた。ネコやサルの視覚野で、終脳蛋白質は特徴的な発現分布を示し、その分布はチトクロームオキシデースの活性分布で示される視覚野の機能構築と一定の対応関係を示した。
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