研究概要 |
ウシ蛙の腰部交感神経節では節前線維を頻回刺激すると, 刺激後シナプス電位(fastEPSP)の発生効率が長期促進される. この長期促進は, 量子数の増大によること, 又Ca^<2+>が必須であることなどを報告した. 本年度は長期促進と静止時の神経終末内Ca^<2+>濃度との関係を明らかにする為の研究を行った. 神経終末内のCa^<2+>の変動は, 自発生微小シナプス後電位(mEPSP)の発生頻度を測定する事, 又終末内のCa^<2+>濃度に依存して変化する短期促進の変化を調べる事で推測した. mEPSPの出現頻度は頻回刺激後持続的に増大し, 長期促進と同様な時間経過で減少した. 短期促進の大きさは長期促進が発生している間減少した. これらの結果は, 長期促進の発生中に神経終末内のCa^<2+>濃度が持続的に増大している事を示唆するものである. 次に, 神経終末内のCa^<2+>濃度を人工的に変化させた時の長期促進を調べた. 終末内のCa^<2+>を減少させる為にquin-2AMを用いた. この薬物は膜を透過し細胞内でquin-2となりCa^<2+>をキレートする. quin-2AM投与で量子数は減少し又短期促進も減少した. 節前線維を頻回刺激しても長期促進はなく持続時間の短い促進現象が生じた. 一方Ca^<2+>イオノフォアであるA23187を作用させ終末内Ca^<2+>濃度を増加させると量子数の著明な増加を生じfastEPSPの増大とmEPSPの頻度の増加が生じた. 長期促進は発生したがコントロールとの大きさの比較は調べていない. 以上の結果は静止時の神経終末内Ca^<2+>濃度の持続的増大が長期促進の発生機序の1つであるという説を支持する. 長期促進の発生機序に更にイノシトールリン脂質代謝系が関与しているか否かを調べる目的でジアシルグリセロールの類似物質OAGやCキナーゼを活性化するフォボールエステルを投与した所量子数の増大を伴う長期促進と類似の現象が観察された. 来年度はこれらの作用につき詳細に調べる予定である.
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