ウシ蛙の交感神経節細胞を用いて節前線維の頻回刺激後に生じるシナプス電位(fastEPSP)の長期促進現象(pre-l.t.p.)を調べ次の事を明らかにした。 pre.-l.t.p.は伝達物質Achの放出量が長期間増大して発生する。 pre.-l.t.p.の発現中ではpair pulseで発生した短期促進は減少し、自発性微小シナプス電位の発現頻度は増大する。CaイオノフォアであるAー23187によりpre.-l.t.p.は増大し、Ca^<2+>緩衝剤quin-2/AMによってその発現は抑制される。これらの結果は、pre.-l.t.p.の発現にCa^<2+>が必要であり、その発現中には神経終末内の基準Ca^<2+>濃度の持続的な増大が生じている事を強く示唆している。 pre.-l.t.p.の発生に第2メッセンジャー(プロティンキナーゼ系)が関与しているか否かを検討した。Cキナーゼの活性剤であるフォーボールエステルとジアシルグリセロールのアナログであるOAGはシナプス伝達の効率を増大する。しかしpre.-l.t.p.はこれらの薬物下でも発生しocclusionは生じない。Cキナーゼ阻害剤Hー7を長時間投与してもpre.-l.t.p.は発生する。更にCキナーゼの他にcAMP依存性又cGMP依存性プロティンキナーゼやミオシン軽鎖キナーゼに対しても高い阻害作用をもつstaurosporine存在下においてもpre.-l.t.p.は発生する。それ故上記のプロティンキナーゼ類はpre.-l.t.p.の発生機序には無関係と思われる。一方、カルモジュリン(CaM)阻害剤であるtrifluo-perazineを投与すると、pre.-l.t.p.の発生は抑制される。このことはpre.-l.t.p.の発現にCa/CaM依存性キナーゼが関係している可能性を示唆している。よって別の阻害剤であるWー7やCa/CaM依存性キナーゼ活性剤などのpre.-l.t.p.に対する作用、又これら薬物の膜に対する直接作用例えばCa電流に対する作用などを詳細に検討する必要がある。現在この点に注目して研究を進めているところである。
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