研究概要 |
1.ウシ蛙交感神経節細胞 細胞内貯蔵部位からのカルシウム・イオンの放出を促進すると考えられているカフェインにより, 所謂M電流が抑制される事を見い出した. M電流はアセチルコリンのマスカリン性作用により特異的にブロックされるカリウム電流である. このことから, マスカリン性受容体を介するシナプス伝達の修飾は細胞内カルシウム濃度のレベルにより大きく影響され得る可能性が示唆された. 2.ウサギ副交感神経節細胞 左記神経細胞膜のイオン電流の解析は, 細胞培養と並行して初年度より進める事を計画したテーマである. 通常の膜電位, 固定法が応用された. 静止膜が約60秒に1回の割合で約10秒間にわたり自発的にカリウム電流を発生させる事を見い出した. 生理的実験条件下で観察され得る上記の様な静止膜イオン電流の振動は, 中枢及び末梢神経系を問わず初めての知見である. この様なイオン電流の振動がマスカリン性受容体により修飾されるかという点, 及び神経細胞を培養した場合にもやはり同様の振動が観察されるかという2点が今後の興味ある課題であろう. 実験結果の一部は, 第64回日本生理学会に於いて発表された. 3.腸管神経叢細胞 非培養の細胞から得られた知見としては, カルシウム依存性カリウム電流が静止電位に於ける全ての外向きイオン電流の約1割を分担している事である. 所謂M電流が欠如している事も判明した. M電流の欠如の生物学的意義は不明であるが, マスカリン性受容体の活性化が上記カルシウム依存性カリウム電流(非M型)を特異的に抑制する事が分った. 腸管神経叢細胞の単離培養には, アウエルバッハ神経叢よりもマイスナー神経叢を用いている. 酵素処理(コラゲナーゼとトリプシン)の時間は20-40分で充分であると思われる. 培養液には5-20%の胎児ウシ血清を添加している.
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