研究概要 |
交付申請書に記載した実験材料・カエルの神経筋標本を用いての基本的実験も行なったが, 同時に, おそらくこの実験目的にはカエルの神経筋標本より適当であろうとおもわれる別の標本・シビレエイの発電器官へのシナプス接合部を用いて一連の実験を行なった. シビレエイはMS222で麻酔し, その発電器官の一部あるいは可能な限りの全体を摘出した. (1)発電器官の上面と下面に置いた金属電極から電位記録を行ないながら, 発電器官へ向かう神経(発電神経)を電気刺激すると, 数十ボルトの一過性の電位変化が記録された. (2)発電器官を薄切すると刺激により発生する電位は小さくなるが, それでも通常の電位記録装置で安定して記録可能な充分の振幅の電位変化を生じ続けた. (3)薄切標本を微分干渉光学顕微鏡で観察すると, 層状をなす発電器官(電気板)の間を細い神経が走行していることを認めた. 更にそれら神経の中を移動している顆粒を観察した. (4)東京都神経科学総合研究書・遺伝学研究室・金関悳先生との共同実験で, 液体ヘリウムで冷却した高純度の銅に薄切発電器官を電気刺激しながら接触させ, 組織を急速凍結し電子顕微鏡で観察した. その結果, 発電器官にシナプス結合する発電線型の軸策終末の超微細構造に関しての幾つかの興味深い知見を得た.
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