研究概要 |
褐色脂肪組織(BAT)の熱産生能および脂肪代謝の神経性・体液性調節において, 交感神経終末および副腎髄質より分泌されるカテコーラミンは最も重要な役割を果たしているものの一つである. そこで中枢神経系によるBAT代謝調節機構を明らかにする目的で, 1)視床下部各部位の電気的・化学的刺激および破壊によるBATおよび副腎交感神経活動の変化, 2)2-deoxy-D-glucose(2-DG)の脳室および視床下部内投与に対する両交感神経の反応に基づく, 視床下部血糖認知機構とBAT代謝調節系との関連, 3)脳内に存在し, 体温調節, 摂食行動およびエネルギー代謝調節に関与している各種ペプタイドによる, 視床下部-自律神経系を介するBAT機能調節作用についてそれぞれ研究を行った. その結果, 1)視床下部外側野(LHA)はBATおよび副腎交感神経に対し, 促進・抑制の両方の調節系を有すること, 視床下部腹内側核(VMH)および室旁核(PVN)はBAT交感神経に対し促進性の調節系を有することが判明した. 2)2-DG脳室内投与による中枢神経低血糖状態はBAT交感神経活動を低下させ, 逆に副腎交感神経活動を増大させた. すなわちBATの代謝抑制によってエネルギー放出を低下させ, 一方副腎のカテコーラミン分泌によって血糖を上昇させ中枢神経低血糖状態を是正するという恒常性維持に, これらの調節系が関与し, しかもそれが相反的な交感神経活動変化によって調節されていることが明らかになった. 3)また同反応にはVMHやPVHよりもLHAが中心的役割りを果たしていることも判明した. 4)脳内ヘプタイドでは, CRF, α-MSH, CCKおよびグルカゴン等が中枢性投与によりBAT交感神経活動に対し促進性に, またβ-エンドルフィンが抑制作用を有していることが明らかになった. これらペプタイドの作用部位・作用機構の解明に, 今後の継続的研究が必要である.
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