雄性の高血圧自然発症ラット(SHR、平均収縮期圧約250mmHg)、脳卒中易発症SHR(SHRSP、250mmHg)及び京都Wistarラット(WKY、120ー130mmHg)を使い、25℃(r.h.60%)人工気象室で実験した。1)半拘束(looserestraint)条件下での体温の比較:ラットを意識下で小型ケージに収容し緩やかな拘束をし、60分間放置後の直腸温(Tre)、尾部皮膚温(Ttail)を比較した。6ー9ケ月齢(M)では平均TreはSHR、SHRSP、WKYの順に38.7±0.3℃、38.3±0.3℃、37.7±0.1℃であった。TreはSHR〉SHRSP〉WKYの順であった。血圧の順はSHRSP〉SHR〉WKYであるので、高血圧が高体温の直接の原因ではないと考えられる。2)半拘束条件下での尾部のVasodilationの閾値温の比較:室温を中性温より0.2℃/minの割合で次第に上昇されるとTtailの階段状の上昇がみられた。最初のTtailの上昇を閾値として、7ー8Mの3群について比較した。閾値Treの平均値はSHR、SHRSP、WKYの順に38.9±0.1℃、38.4±0.1℃、38.0±0.1℃であった。SHRにおける閾値Treは他二者のそれ等に比し有意に高いがSHRSPはSHRより有意に低かった。この結果によりSHRに於いて放熱反応発現閾値が最も高いことが確認された。3)自律神経Toneの比較:半拘束状態にて薬理学的方法で心臓支配の自律神経のToneを比較した。6ー7MのラットでSHR、SHRSP、WKYの順に副交感神経のToneは19.4%、15.9%、15.2%で、交感神経のそれは38.3%、24.0%、26.9%と算出された。SHRの自律神経のToneは3群の中で最も高かった。4)拘束ストレスの体温への影響:ラットを拘束ケージに収容すると、Treの上昇心拍数の増加、Ttailの持続的な低下が観察された。拘束によって上昇を開始したTreは10ー20分後にpeakを作り、その後次第にinitial levelに復帰する傾向を示した。Treの上昇幅はSHR〉SHRSP〉WKYの順でありかつ加齢により減衰した。
|