脳室内投与神経ペプチドの血圧、心拍数と腎交感神経活動(RSNA)に及ぼす効果を覚醒及び麻酔ラットを用いて調べた。 1.アンギオテンシンII(AII) 慢性的に留置したガイドカニューレを介して、覚醒ラット側脳室内にAIIを投与すると、用量依存性に血圧上昇、心拍数滅少を伴ってRSNAの滅少が見られた。これらの反応はAIIリセプターの括抗剤であるサララシンの脳室内前投与で消失したので、中枢内AIIリセプターを介すると考えられる。ウレタン・クロラロース麻酔したラットでもAIIにより血圧上昇とRSNAの滅少が見られた。反応の大きさは覚醒ラットに比べて小さかった。心拍数は有意な変化を示さなかった。AIIによるRSNAの抑制反応が血圧上昇による2次的効果である可能性を調べるため、圧受容器からの求心性線維を切断したラットを用いて、脳室内投与AIIの効果を調べた。正常麻酔ラットと同様なAIIによるRSNAの滅少が見られたので、このRSNAの抑制反応は圧受容器刺激によるものでないことが示唆された。AIIによるRSNAの抑制反応の生理的意味は不明であるが、腎血行動態以外のレニン分泌あるいは尿細管でのナトリウム・水の再吸収などに関与していると考えられる。 2.心房性ナトリウム利尿ホルモン(ANP) 覚醒及び麻酔ラットいずれに於ても、ANP単独脳室内投与では何ら血圧、心拍数とRSNAは変化しなかった。しかし、ANPはAII脳室内投与による血圧上昇と徐脈反応を滅弱させた。AIIによるRSNAの抑制反応は影響を受けなかった。したがって、AIIとANPの心・血管系に対する中枢内相互作用部位と腎機能に対するそれとが異っている可能性が示唆された。今後、これら脳内作用部位の解明を目指してゆくつもりである。
|