研究概要 |
本補助金交付以前に筆者は、炎症反応と生体アミンに関して以下の点を明らかにしていた。 (1)ある種の起炎剤をマウスに投与すると、肝、肺、脾などにヒスタミン合成酵素のヒスチジンデカルボキシラーゼ(HDC)およびポリアミン合成の律速酵素であるオルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)活性が3〜5時間をピークに増加し、又、肝ではセロトリン(5HT)も顕著に増加する。 (2)これらの反応の誘導にはマクロファージの関与が重要である。 (3)株化マクロファージP388D_1細胞は、上記反応全てを誘導する因子を産生し、この因子は分子量と等電点でインターロイキン-1(IL-1:免疫調節の重要な因子)と一致する。 (4)薬理学的実験より肝での5HTの蓄積は、血糖低下の原因になり得ることを示した。又、肝炎の原因ともなり得る。 本補助金交付期間においては、以下の点を明らかにした。 (5)マクロファージガ産生するIL-1およびTNF(腫瘍壊死因)はある種の腫瘍細胞に対しその増殖を抑制又は刺激する。この作用はODC活性の抑制と発現に関係する。 (6)遺伝子組み換え技術にり人工合成されたヒトのIL-1とTNFは、起炎剤と同様に(1)で述べた反応全てを誘導する。又、両因子の併用により、これらの反応は増強される。即ち、(3)の結果を実証すると共に、IL-1とTNFがこれらの反応の調節因子となり得ることを明らかにした。 (7)肝での5HTの増加は他の組織からの動員によりもので、この機序に血小板の関与が推定される。 結論:上記の生体アミン変動の機構は、炎症又は免疫反応の調節と密接に関連する。本研究の成果および今後の進展は、炎症反応の理解の新しい糸口となる。なお、本補助金で得られた成果は(6)と(7)であり、(6)に関する論文の一つは受理され現在印刷中であり。他の一津は投稿準備中である。(7)の発表には、なお詳細な検討を要する。(5)はアメリカ国立癌研究所(Frederick,MD)との共同研究で、昨年10月公表された。
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