研究概要 |
交付申請書に記載した研究計画に従って, 成熟ウサギの上頚神経節節前線維を外科的に摘除(decentralization)して8週間後の摘出耳動脈潅流標本を用いて, 1.経壁電気刺激によって避難される^3H-ノルエピネフリンの量を測定した. そして, その変化の機序を調べる目的で, 2.α_2-アドレナリン受容体の作用薬とよび拮抗薬の効果, また, 3^3H-ノルエピネフリンの血管への取り込みを検討した. その結果, 1.まず(1)本実験方法によって, 経壁電気刺激により血管支配交感神経終末から遊離される^3H-ノルエピネフリン量を適切に測定できることがわかった. そして, (2)低頻度(0.1-0.5Hz)の電気刺激による^3Hの遊離量は, 節前線維を摘除された(decentralized)動脈の法が対照側よりも有意に増大していた. (3)中・高頻度(1Hz以上)の刺激においては, 差がなかった. 2.(1)decentralized動脈, および対照動脈における^3H-ノルエピネフリン遊離は, 選択的α_2-アドレナリン受容体拮抗薬クロニジンによって同程度抑制された. また, (2)選択的α_2アドレナリン受容体拮抗薬ヨヒンビンは, 両血管からの^3H-ノルエピネフリン遊離を同程度増大した. 3.^3H-ノルエピネフリンの交感神経終末への取り込みは, decentralized動脈と対照動脈とで有意な差はなかった. 以上の結果から, 私どもが予想したようにdecentralizationによって血管支配交感神経の終末は, 電気刺激に対して感受性が増大すること, すなわち, 『キャノンの除神経の法則』は交感神経の節後線維においても適応するものであることが確認された. しかし, 当初予想したα_2アドレナリン受容体の感受性低下によるものではないようで, その機序の解析は, 今後の問題である. なおまた, 今年度中に時間的経過を十分に追うことができなかった. これも次年度に残された課題である.
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