1.私どもはこれまでウサギ耳動脈をモデルとして、交感神経ー効果器の機構を研究してきた。そして、節前線維の切除(decentralization)により、血管平滑筋の薬物感受性が増大するのみならず、節後線維末端の興奮性も増高することを見いだした。本研究の目的は、^3Hーノルエピネフリン(^3HーNE)を用いて先の推論を直接的に証明し、更にその機序を追究して、交感神経による血管機能の調節機構をより明らかにすることである。 2.雄性成熟ウサギの上頸神経節の節前線維を片側外科的に切除してdecentralizeし、他側は対照とした。手術から1、2、4あるいは8週間後に、耳動脈と上頸神経節を摘出して用い、以下の実験結果を得た。 3.手術後8週間の血管では、低頻度の経壁電気刺激において^3HーNE遊離量が著しく増大していたが、手術後1、2および4週間では有意な変化は認められなかった。 4.αーあるいはβーアドレナリン受容体の作用薬ならびに拮抗薬は、経壁電気刺激による^3HーNE遊離に対してあまり影響しなかった。 5.^3HーNEの血管・神経への取り込みは手術後8週間の血管と対照血管との間で有意な差異はなかった。 6.ラジオエンザイム薄層クロマトグラフィ法によって定量したカテコールアミン含有量(ドーパミン、ノルエピネフリン、エピネフリン)は、手術後8週間の血管および上頸神経節のいずれでも変化は認められなかった。 7.以上の結果は、慢性的にdecentralizeされた血管で認められる低頻度の経壁電気刺激による^3HーNE遊離量の著しい増大は、カテコールアミン生合成の変化やノルエピネフリン取り込みの変化によるものではなく、刺激ー伝達物質分泌連関の変化によるものであろうことを示唆している。今後この点を追究する予定である。
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