研究概要 |
腎血流量や糸球体ろ過量は, 糸球体前後に位置する2つの抵抗血管-輸入細動脈と輸出細動脈-により調節される. 多くの血管拡張薬は腎血流量を増加させるが, 糸球体ろ過量には影響を与えない. 一方, 腎動脈圧低下やサイクリックAMP(CAMP)産生を刺激する刺激は, 腎血流量と糸球体ろ過量を同程度増加させる. そこで, CAMP産性能に注目して本研究を行った. ペントバルビタール麻酔イヌの腎臓を摘出し, 腎動脈にカテーテルを挿入, 蛋白を含むリンゲル液で潅流し, 血液成分を除去する. ついで, 2mmの厚さのスライスを作製し, 実体顕微鏡下で輸入細動脈を単離した. 1)単離輸入細動脈でのCAMP産生能:30分のインキュベーションでのCAMP産生能は, 1mmの輸入細動脈当り36±2fmul/minであった. CAMP産生刺激であるフォルスコリン10^<-4>M添加により, 10倍の産生増加があった. ドーパミン10^<-4>〜10^<-8>Mは, 用量依存的なCAMP産生増加が認められ, ドーパミン1受容体遮断薬SCH23390により, その作用は完全に抑制された. 輸入細動脈には, CAMP産生能のあることが明らかとなった. 2)輸入細動脈の潅流実験:輸入細動脈の拡張度とCAMP産生との関連を調べるため, 潅流実験を行った. 潅流圧60mmHgで潅流すると, 対照時の内径は25μ前後である. ノルエピネフリンを加え内径15μ程度まで収縮させた状態で, CAMP産生を増加させるフォルスコリン20μMを添加すると, 70%もの内径増加, すなわち拡張が認められ, 輸入細動脈におけるCAMP産生と血管拡張の間に相関が認められた. 次年度は, 輸入・輸出細動脈でのCAMP産性能の差について検討する予定である.
|