腎血流量や糸球体ろ過量は、糸球体前後に位置する2つの抵抗血管-輪入細動脈と輸出細動脈-により調節されている。これら2つの抵抗血管が存在することは腎臓に特異的であり、腎循環調節機構を明らかにするには各抵抗血管の性質を明らかにする必要がある。本研究では、in vivoの実験糸に於いて各細動脈に選択的に作用する物質の発見、in vitroの系に於て単離輸入細動脈のアデニレ-ト・カイクレ-ス活性化による拡張について検討を加えた。 1)in vivoの実験:ペントバルビタ-ル麻酔イヌの腎動脈内にアデノシン(Ad)、グルカゴン(Gl)、アセチルコリン(ACh)を注入し、異なる腎動脈圧下での腎血流量の反応性より作用部位の決定を行なった。自動性調節の下限圧(75mmHg)では輸入細動脈の血管抵抗値はほぼ0であり、全く拡張余力がない。Adは、正常腎動脈圧と75mmHgの圧で腎血流量の増加には差がなかった。Glは、正常圧で50%の血流増加を来たしたが、75mmHgでは全く血流に変化がなかった。AChは、正常圧で100%、75mmHgで50%の増加を来たした。以上より、Adは輸出細動脈を、Glは輸入細動脈をそれぞれ選択的に拡張させること、Achは両細動脈を拡張させることが明らかになった。フォルスコリン(Fo)もGlと要様の作用を示した。 2)in vitroの実験:単離したイヌ輸入細動脈を用いた実験を行なった。ノルエピネフリン(NE)で前収縮させた輸入細動脈にFo(10^<-6>〜10^<-8>M)を添加すると、NE処置前まで拡張した。単離輸入細動脈(10本)にFO添加によるサイクリックAMP(CAMP)産生韻を検討したところ、10倍以上のCAMP産生増加が観察された。輸入細動脈の拡張は、CAMP産生と有意の相関があった。選択的な血管作用物質の発見および輸入細動脈とCAMP生産量との相関を明らかにした本研究は、腎循環調節機構解明につながるものと考える。
|