脳幹部縫線核群は運動、感覚、自律神経系を始め各種機能の調節に関与するが、呼吸および循環調節には、延髄に存在する淡蒼ー、不確ーおよび大縫線核が関与する。この延髄縫線核の呼吸および循環調節の機序を、特に縫線核の主要な伝達物質であるセロトニンおよびGABA作動系について検討し、その受容体機構についても分析を行った。 猫の延髄縫線核の電気刺激は呼吸(横隔神経活動)、腎神経活動および血圧のほぼ平行する抑制反応を惹起したが、その腹側部刺激では多くが興奮性反応に移行し、その境界部の刺激ではこれらの反応に一部分離がみられた。この反応を縫線核刺激時の横隔神経の平均加算電位について検討すると、初期の軽度の興奮性電位とこれに続く持続的な抑制性電位との二相より成り、縫線核腹側部刺激ではこの興奮性電位が増大し、反復刺激により興奮性反応に移行する現象が認められた。前者はメチセルジドにより、後者はプロプラノロ-ル(5ーHT_1拮抗作用確)により一部拮抗され、夫々5ーHT_1および5ーHT_2受容体の関与が示唆された。延髄呼吸性ニュ-ロンおよび吻側腹外側延髄血管運動性ニュ-ロンは縫線核刺激により短潜時で顕著に抑制され、この抑制効果は5ーHT拮抗薬あるいはGABA拮抗薬の静注あるは微小電気泳動適用により拮抗され、セロトニンおよびGABA作動系の関与が強く示唆された。これらのニュ-ロン更にその他のニュ-ロンに対するセロトニンおよびGABAの電気泳動適用は用量依存性の抑制効果を惹起し、これらは夫々の拮抗薬により拮抗された。ただセロトニンの抑制効果はメチセルジドによって却って増強され、5ーHT_2受容体の共存も示唆された。 以上、延髄縫線核は延髄の呼吸性および血管運動性ニュ-ロンに対する直接の抑制的制御に関与することが強く示唆されたが、他の延髄ニュ-ロンに対しても同様に汎性抑制的制御を行っていることが示唆された。
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