研究概要 |
筋肉の収縮がCa^<2+>濃度により制御されていることはよく知られている. 一方骨格筋では種々の薬物により収縮系のCa^<2+>感受性が変化することも報告されている. 小川はカルモジュリンの阻害薬として知られているトリフルオペラジン(TFP)がトロポニンCのCa結合の親和性を増すことを報告しているので, TFPのCa^<2+>依存性張力に及ぼす影響について検討した. カエル骨格筋より調整したスキンドファイバーのCa^<2+>による張力発生に及ぼすTFPの作用を調べたところ, その作用は以下の如くであった. 1.収縮系のCa^<2+>感受性を増し, Ca^<2+>濃度-張力関係を低Ca^<2+>濃度側へ移動した. 2.Ca^<2+>濃度-張力関係のCa^<2+>依存性を緩やかにした. これら1.,2.の1/2最大効果は10-30μMTFPで得られた. 3.高Ca^<2+>濃度での最大張力を減少させた. この1/2最大効果は200μMTFPで得られた. 従って3.の効果は1.及び2.の効果と異なった作用機序によると結論される. これらTFPの効果はCa^<2+>の有無には依存しなかったので, カルモジュリンを介する効果ではない. 一方アクトミオシンのCa^<2+>依存性 ATPase活性は調べたCa^<2+>濃度全範囲(≦0.1-10.0μM)にわたって210-30μM TFPにより促進された. 高Ca^<2+>濃度依存下でのATPase活性はTFPが100μM以上では抑制された. Ca^<2+>非感受性ATPase活性はTFPにより濃度依存的に促進された. 以上の結果はTFPのCa^<2+>感受性促進効果(上記1.+2.)はトロポニンCのCa^<2+>親和性亢進のみでは説明できない. ミオシン, アクチン, トロポミオシン, トロポニンおよびこれら分子の相互作用も影響を受けると考えられる. また既に報告されているカフェインやクエルセチンによるCa^<2+>感受性亢進とは異った機序によることも推測された. 以上の結果の一部は第60回日本薬理学会総会に於て報告した. 他のカルモジュリン阻害薬についても検討する予定である.
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