研究概要 |
初年度はカルモデュリン拮抗薬として知られているトリフルオペラジンがカエル骨格筋スキンドファイバ-のCa^<2+>依存性張力発生においてそのCa^<2+>感受性を亢進させること、この効果は当薬物のトロポニンCのCa^<2+>親和性増強作用だけでは説明されないこと、またカルモデュリンの阻害を介する効果ではないこと等を明らかにした。次年度はこの結論を確かめるため化学構造の異なる他のカルモデュリン阻害剤、即ちクロ-ルプロマジン、Wー7、メリチンについても同様の実験を行った結果、カルモデュリン阻害能とCa^<2+>感受性亢進効果とは平行しないことを明らかにした。これらの研究経過に於て張力発生とそれに対応するATPase活性との間の解離を示唆する実験結果を得たので、同一標本を用いて、張力とATPase活性とを同時に測定することを計画し、薬物によりどのように影響されるかを検討した。ラットまたはモルモット骨格筋速筋から調製したスキンドファイバ-を用い、張力をトランスジュ-サ-を用いて等尺性に測定し、同時に生成されたADPを酵素共役法によりNADHの減少としてモニタ-した。筋小胞体によるATPase活性は表面活性剤CHAPS,1%で処理することにより除去した。因にmechanically skinned fiberでは全ATPase活性の高々5%が筋小胞体によるATP分解であった。筋節長が2.5μmではATPase-pCa曲線は張力-pCa曲線より低Ca^<2+>濃度側にあった。筋節長を3.0μmとすると張力-pCa曲線が低Ca^<2+>濃度側に移行したが、ATPase-pCa曲線は変らず、両活性の間の解離はみられなくなった。カフェインは張力、ATPase活性いずれにも同じように作用した。トリフルオペラジンを始め他の薬物について検討するためにはcaged-ATPを用いたflash-photolysisと急速凍結反応停止法を併用した方法で検討しなければならない。化学的エネルギ-の機械的エネルギ-への転換機構という重要な問題であるので、新しい研究計画のもとに更に発展させたい。
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