本年度は62年度に続き、あくび行動の発現に関与する中枢アドレナリン性神経活動およびドパミンDー2受容体の特性について検討を加え、次のような結果を得た。1.ラットにドパミンDー1およびDー2両受容体の刺激効果を有するアポモルヒネを投与すると、あくび行動が発現した。このアポモルヒネの誘発あくび行動は、単独ではあくび行動を誘発しない中枢アドレナリン性βー受容体遮断薬(インデノロール、アルプレノロールあるいはブクモロール)で増強された。しかし、末梢性のβー受容体遮断薬であるカルテオロールおよびアテノロール、さらにαー受容体遮断薬のプラゾシンでは影響されなかった。2.逆にβー受容体作動薬であるサルブタモールで抑制された。3.特異的ドパミンDー2受容体作動薬タリペキソール(BーHT920)あるいはSND919の小量投与によってあくび行動が発現し、本行動はドパミンDー1受容体作動薬SK&F38393との併用投与により抑制された。4.しかしこれらのドパミンDー2受容体作動薬の単独大量投与時あるいはSK&F38393との併用投与時に、あくび行動は発現しなかった。5.大量投与時に軽度の常同行動が観察された。この常同行動はSK&F38393との併用により著しく増強された。6.しかし、あくび行動を誘発するタリペキソールあるいはSND919の小量とSK&F38393を併用投与しても常同行動は観察されなかった。7.あくび行動を誘発する小量のタリペキソールは基礎血清プロラクチン値およびαーメチルチロシン投与後の高プロラクチン値を減少させた。以上の結果より、あくび行動の発現は中枢アドレナリン性βー受容体を介して調節され、またあくび行動の発現に関与するドパミンDー2受容体は、下垂体のプロラクチン分必細胞に存在するドパミンDー2受容体に類似し、常同行動の発現に関与するドパミンDー2受容体より感受性が高いことが明らかにされた。
|